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「給食番長〜田川弁バージョン〜」
by ういろうさん



01
キーン コーン カーン コーン
わんぱく小学校の  給食の時間が  はじまったごとあるよ。

02
どかん!ばしゃん!
「うまいシチューは、オイラのもんやきの!」
「きゃー、番長やめりー!」

03
「よっしゃ、おまえたち、すかんとは残していいき、さっと 遊び行こうや!!
せいじ、はよせんか!
まさお、グズグズしょったら おいていくきの!」
「うわーい、ちょっとまって、番長さーん、まさお、いそげっちゃ」
「ええいっ!  やさいすかんき、ぼくものこすばい」
「ぼくも」
「じゃ、あたしもー」
1年2組はいっつも大さわぎ。入学以来、まだいっぺんも給食をちゃんとたべたことがないんよ。

04
みんながお昼休みで遊びにいったごろ、給食室では  おばちゃんたちが  肩をよせて泣きよったんよ。
「うっうっ、1年2組は  またこげん残してから・・・」
「もう これで3ヶ月ずーっとやが」
「番長っち  呼ばれよう子が  みんなをそそのかしよんよ」
「その子を  なんとかせなね」

05
つぎの日の給食の時間、いよいよはらかいた給食のおばちゃんたちは  1年2組の教室に のりこんだんよ。
「こらあっ!  あんたが番長やね!  しゃんしゃんすわってたべんね!」
「へっへへ〜ん。いやばーい。オイラ牛乳もパンも  すかんもん」
番長はいっちょんいうこときかせん。
「ちょっとまたんね、残したらもったいないやろ!」
「こげな給食やら、ぜったいたべんばーい」

06
1年2組は、その日も  ようけ給食を残したんよ。
「へっへへ。さーて、かたづけっしもたし、あそびいーこう」
「もう、なんをゆってもダメなんやか・・・」
給食のおばちゃんの目から  おおつぶの涙が  あふれだしたんよ。
そして、そのつぎの日・・・

07
キーン コーン カーン コーン
いつものごと  給食の時間が  きたんやけど、給食室の前で  みんながさわぎよんよ。
「どうしたん?せいじ、なんかあったんか?」
「番長さん、あれみてん!給食のおばちゃんたちがいえでしたっちばい」
給食のおばちゃんたちがおらんやったら、みんなのお昼はぬかなごとなる。
「あ〜〜〜ん」「びぇぇえ〜〜〜〜〜〜ん」
「番長が“すかんとはのこし!”とかいうき、おばちゃんたちが  はらかいちょうがー!」
「番長、どうするん?」
「あやまってきー、番長!」
「どうかして、番長!」
「番長!」「番長!!」

08
みんなが  ぐらぐらこいちょうとに、番長は自信満々。
「ふっふん。だいじょうぶっちゃ、まかしちょき!給食やら、オイラたちでつくったらいいやん。いくぜ、まさお!」
「がんばる〜」
「せいじ!」
「まかしちょって、番長さん!」
「たかふみ!」
「おっけい、番長!」
「おばちゃんたちより  うまい給食  つくっちゃるき!」

09
「せいじ!今日の献立はなんかい?」
「えーっと、ビーフカレーとひじきのサラダっち!」
「よし、まさお。肉もってこんか!!」
「うわ〜、重いばい、番長!」
「そーれ、せいじ!  魚でダシとるきの!」
「さすが番長さん、あったまいい!」
「たかふみ!かくし味に アップルいれてみれ!」
「よしきた、番長!」
「うおおおお!!!」
トントントントントントントン!!!
番長は、すさまじい勢いで
ひっしもしで材料を切ったんよ。

10
「どぅりゃああ〜〜!!
612人分なんて 朝飯まえっちゃ!
じゃんじゃん、じゃんじゃん  具入れっしまえ!
まぜて、まぜて、かきまぜれ!」
「番長、かっこいー!」

11
ついに 番長たちの給食が できあがったんよ。
みんなは とびあがって おおよろこびたい。
「ほしたら、みんな たべり!」
「やったー!  さすが番長!  めちゃめちゃおいしそうやん!!」

12
ガッタン ガタン
あれ? なしやか? みんなが 席をたちはじめたばい。
「どうしたん!?  みんな!?」
番長はなんがなんかわからんごとなりました。
「まずーい。ぜんぜんおいしくないがー」
「こげな給食やったら、いっちょん食べられんよー」
「あ〜〜〜ん」「びぇぇえ〜〜〜〜〜ん」
「はぁ?  食べられんっち?  なしかい!?  オイラたち、みんなのために いっしょうけんめいつくったんばい・・・」

13
下校時間をすぎて、あたりはすっかり暗くなってきたんよ。
「こんなはずやなかったんに・・・
オイラのすきなもん いっぱい入れたんに・・・ 」
「番長さんの包丁さばきは 最高やったばい」
「ほいでも、食べてもらえんやったきね・・・」
「ねぇ、番長。明日もするん?」
「明日やろ・・・」
「おばちゃんたち・・・帰ってこんやか・・・」

14
日が暮れて おおなべ、、食器をゴシゴシゴシゴシ。
もう、番長たちは いまにも泣きだしそうやが。
そんとき・・・ガチャリ
「やっと わかったんやね?」
「あ!その声は!?」
 
「おばちゃん!」

15
「おばちゃんたちも みんなに 残されたら 悲しいんよ。おいしく食べてもらえるごと まいにち いっしょうけんめい 給食をつくりようんやけん」
「それにね、給食に入っちょうのは、元気におおきくなるんに 必要な食べものばっかりなんよ。やき、みんなが残したら おばちゃんたちは 心配なんやが・・・」

16
「そうやったん!」
「おばちゃん いままでごめんね。ほんとうにありがとう」
「いいんよ、いいんよ」
「明日からは いっぱい食べて おおきくなるんよ」
「オイラはよおおきくなって、おばちゃんのおムコさんになるき!」
「まぁ、番長やろ。うふふふふ」
「ぅわあっははははははは」
夜の給食室に 笑い声がこだましたんよ。

17
ほして、つぎの日。
1年2組の机のうえには、きれいにならんだおいしそうな給食がいっぱい!
しゃきっと すわって 給食番長の合図にあわせて、
お手手をあわせて、みんなそろうて いっただっきまーす!


〜翻訳をされたういろうさんより 〜
この田川弁バージョンは、田川市美術館で開催された給食番長の原画展で読み聞かせもさせていただきました。
“田川弁”といっても田川市と田川郡では少し異なる部分があり、これは昭和50年代に田川市で小学生生活をすごした私の田川弁です。(よって、リアルタイムの平成キッズの田川弁ともちょっと違っています)方言も世代によって変化していくものですよね、昭和の田川の子の記録として楽しんでいただけたらと思います。



給食番長シリーズ @
『 給食番長 』好学社 (2014/07)
作:絵 よしながこうたく




ちなみにオリジナルわんぱくシリーズの博多弁と言い張ってる方言は ↓↓

ここです。福岡市は香椎の『香椎弁』